2007/01/08
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  「親力」をつけるために必要なこと  

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これも広く考えれば「映像の時代の国語力」に通じるのだが…

子ども達の学力を伸ばすために、旧来の方法はどうも耐用年数が過ぎてしまったような形だが、かといってこれという新しい学びの方法が確立されているわけでもない。だから今、様々な模索が続いている。かくいう私もその一人である。そういうこともあり、最近、いろいろな本に当たっている。他から学ぶということもあるが、自分の考えの後付けになればいいかなとも考えている。

ここに『「親力」で決まる!』というタイトルの本があり、サブタイトルには「子どもを伸ばすために親にできること」とある。著者の親野智可等氏は現役の小学校の教師だという。超人気メルマガ発行人でもある。私がこの本を買い求めたのもメルマガを発行している人だという予備知識があり、店頭で平積みのこの本を目にしたからである。本を買う場合、前もって決めておいて書店で求めることもあるが、だいたいはこういう出会いが多い。逆にネットで決めることはほとんどない。

この本は当初メルマガで発行していたものを読みやすく一冊にまとめたものである。メルマガでは日刊で発行し一万人ほどの読者がいたそうである。その秘密の一端が本書を紐解けば明らかになる。実は本の中身と本の売れ行きとの間にはある相関関係があるのだ。内容が専門的で高度になればなるほど(今流の言葉で言えば、オタク度が増せば増すほど)読者は少なくなり、大衆性があればあるほど読者層は広がると言える。

以前、もう随分前、扇千影がカメラの宣伝で「私にも写せます」とやっていたCMがあったが、それも大衆性をアピールしたものであった。山に例えれば、山の裾野が広いほど高度は低く、頂上に近づくほど半径は狭まり、頂上では一人か二人くらいのスペースしかないということになるが、著者のメルマガもそれだけ多く読まれたということは、専門性はともかくとして、内容にそれだけの普遍性があり、それゆえ多くの親達に支持されたということになる。その意味では、何か特別なことが主張されているわけではないが、世の多くの親御さんにとっては、はっきり言ってお勧めの本となっている。

本書は3部で構成され、1部は「子どもの『楽勉』をプロデュースする」、2部は「学力・人間力を伸ばす習慣」、3部は「「幸せな親子関係の作り方」となっている。

やはり本書で親御さんが一番関心を持たれるのは「『楽勉』をプロデュースする」ということではないか。文字通りに解釈すれば、子どもに「楽をして勉強させる」、あるいは「楽しんで勉強させる」となるが…そんな魔法のような方法が実際にあるのだろうか、あるとすれば是非知りたい、というのが偽らざる親達の本音であろう。この現役の小学校の先生はその辺のツボを見事に心得ている。「楽勉」とは一見子どもに楽をさせて勉強の効果を上げさせる方法のように聞こえるが、実は「親が楽をして子どもに効果的に勉強をさせる方法」を説いているのだ。

だが、この先生は親に出来ないことを要求はしない家庭の中で親がちょっと工夫を凝らせば、子どもの勉強のために親が少しだけ配慮してやれば、基本的にどこの家庭でも出来ることを著者は勧めている。たとえば、トイレに地図を貼っておくこと。テレビの横に地図帳を置くこと。漫画で歴史に興味を持たせること。そして、音読、語りかけ、読み聞かせ、絵本や漫画から読書の世界へ自然に導くこと。その他、算数にせよ理科にせよ、子どもに毎日の生活の中で無理なく考えさせる習慣をつけさせるのが狙いである。

そのためには親にも注文はある。予め教科書に目を通しておいて、子どもが学校で今どこを勉強しているかくらいは把握しておくことを勧める。しかし、家庭は学校ではない。家庭ではいかに子どもが「毎日の生活の中で、当たり前のように楽勉できる」か、その環境を整えてやることが大事なこと。知的な楽しさを経験させることが本来の目的である

第2章は、現役の小学校の先生として日々様々な子どもたちやその背後の家庭と接しているからであろうか、そのような学力を伸ばすためにも日々の生活習慣の大切さを強調している。子どもの熱中体験の大切さ、自分の仕事を持つこと、早寝をすること、朝は笑顔であること、生活習慣を身につけさせること、目当てと約束が区別できること…これらは子どもの行動の視点で書かれているが、実は全ては親の態度にあることが分かる。子育てにおける親の責任を自覚するのが肝要ということだ。

第3章は、どうすれば子どもをやる気にさせられるかに的を絞る。コツは褒めること。親はそのためのテクニックを身につけ、プラスのイメージの言葉を遣い、子どもの人格を否定するような言い方は決してせず、後は達観して待つということ。つまりは、子どもをどう伸ばすかの手がかりは親の力にあるということである。そのために一番大切なことは、家庭が安らぎとくつろぎの場であるかどうか、父母の愛情があるリラックスでして安心して過ごせる場であるかどうかであると著者は言う。

この本がなぜ売れたか…改めて考える。その答えの一つは内容がとても平易であること、そして、どの家庭でも今すぐにでも実践できることが沢山書かれているということにあるのでゃないか。しかも、勉強を当たり前の生活の中に溶け込ませ、遊びとつなぎ、映像の時代に相応しい学びの方向性をも示している。特にこの中で言いたいことは、子育てや子どもの勉強のあり方を大変なこととして思いつめるのではなく、楽に考えた方がいいんだよ、楽しんだ方がいいんだよという視点を出していることではないかなと私には思われる。これはやはり、いつも子どもの側にいる小学校の教師にして始めて出来ることではなかったかとも思う。